物語の主人公を苦しめる為の方法4パターン
「物語の主人公を苦しめる為の方法4パターン」
物語において主人公は苦しむ事が多いです。
大切なものを失って苦しんだり、二つのものを天秤にかけて葛藤したり……。
もしも、貴方が物語の主人公(もしくは主要キャラクター)を苦しめ、苦しみと対決する物語を作りたいと思っている場合、今回の記事が役立つかもしれません。
「面白い物語」の要素の一つとして「主人公の苦しみと、そこからの脱却」があります。
読者は苦しむ主人公を自然に応援し、苦しんだ末にその苦しみを克服する物語を望んでいるのです。
目次
「死にたくなかったから」命の危機(肉体的方法)
分かり易さ、説得力がある方法はこれです。
誰もが生きている限り避けて通る事ができない「死の恐怖」(命の危機)
ほぼ間違いなく共感できる苦しみであり、主人公の苦しみに対しての理由付けも必要ありません。
ただ「死にたくなかった」これで十分なのです。
例えば、主人公に対して拳銃を突きつけて「死にたくなかったら~をしろ」と他のキャラクターの要求があったとします。
死にたくなかったら命令に従え、死にたくなかったら大人しくしていろ等。
もしも、貴方が主人公だったとしたら、どうでしょうか?
よほどの死にたがりではない限り、普通は「自分が死にたくないから」という理由で相手の命令に従うのではないでしょうか?
また、物語をより面白くする要素として「自分の命と天秤にかけるモノ」を設定する事も可能です。
例えば「正義感」「大切な人」等があげられると思います。
自分が死んででも、正義感を貫き通したいという信念があったり、自分が死んでも助けたい人がいる。
この場合には、自分の命と<何か>の狭間で葛藤する主人公を描く事が可能です。
また、直球で「生か死」ではなく、肉体への攻撃、苦痛によって主人公を苦しめても、共感を得やすいです。
例えば殴られる、蹴られる。
病気との戦い。
この辺りの苦しみの場合は、普通の生活でも体験する事が多く、主人公の苦しみを理解する事が容易に出来ます。
不良に絡まれて殴られている主人公の描写があれば「ああ、痛そうだなぁ」とほとんどの人が理解できるはずです。
また、作中で「風邪にかかって苦しそうな主人公」を描いたとして、この苦しみも多くの人が理解できるでしょう。
突然「生か死か」の場合では、死を体験していない人がほとんどですから(貴方が死んで生き返る人間ではない、臨死体験をしていない場合は)空想の物語だと思われてしまう事も多いのです(自分の事のように思えない事があるという事)
しかし、最初は殴る蹴る、風邪といった日常的な痛み、苦しみからはじまり、最終的に「生か死か」へ段階的に進んで行くと、更に読者の理解は深まるはずです。
とはいえ、冒頭で書いた通り「死」は絶対的な恐怖であり、ほぼ間違いなく「死にたくなかったから」この理由の説得力はあります。
大切なものを奪う
これも使い方によって非常に共感が出来やすい、応援しやすい主人公の苦しめ方です。
この「大切なもの」と言われて、貴方なら何を思い浮かべますか? 何を設定しますか?
一例を書いてみようと思います。
(1)人(家族、恋人、友達、仲間)
大切な人を主人公から奪ってしまう方法です。
なぜ、マリオは毎回ピーチ姫を助けにいくのでしょうか?
なぜ、恋人をさらわれた主人公は恋人を助けるために冒険に出かけるのでしょうか?
なぜ、妻を殺された主人公が、相手に復讐をしようと思うのでしょうか?
「なぜ?」なんてわざわざ問いかけなくても、答えは決まっていますよね。
それが自分にとっては無くてはならない人、必要な人、好きな人だからです。
いつも当たり前に存在していた大切な人が、ある日突然いなくなってしまった、殺されてしまった=奪われた。
これだけで主人公にとっては相当な苦痛です。
場合によっては自分が死ぬのと同じか、それ以上の苦しみとも言えるでしょう。
それだけに、この理由の説得力は絶大です。
恋人を助けるために行動する主人公になぜ?と言う人は少ないでしょう。
恋人を殺した相手に復讐したい主人公に対してなぜ?と言う人も少ないでしょう。
(実際に復讐するかどうかは別として、主人公の憎しみと悔しさには納得が出来るはずです)
(2)能力
主人公にあった特殊な力を奪ってしまう方法です。
能力といっても、ファンタジー的な能力から、現実的な「特技」の事でもあります。
例えば、魔法使いから「魔法」を奪ってしまうとか。
⇒この場合は「魔法」を奪われた元魔法使いが、魔法を奪った敵を倒すため、剣士として頑張っていく物語。とか出来そうですね。
現実的な例えでいえば、オリンピックに出るようなスポーツ選手(それだけに人生をかけてきた)から、その能力を奪ってしまう。
⇒この場合はスキージャンプのトップ選手が、ある時の事故が原因で二度とスキージャンプが出来ない体になってしまった。
それによって、苦痛を受け、自殺をしようと行動する……が、ある時、自分と同じように苦しみながらも必死に生きようとする人と触れることによって……。
というような物語が作れそうです。
どうでしょうか?
実際に、フィクション、ノンフィクション共に思い浮かべやすい、応援しやすい、共感しやすいと思いませんか?
主人公にとっての「大切な能力」これを物語の冒頭で奪ってしまう。
これは相当な苦痛なのです。
(3)宝物
主人公から「大切な宝物」を奪ってしまう方法。
これは、宝物を何にするのか、なぜ「その宝物」が大切なのかというエピソードが重要になってきます。
例えば、恋人の形見の鏡。
これを奪われたから、自分の死の覚悟をして冒険に出かける。
これだけを聞くと「いや、そこまでする程、その鏡は大切なの?」「死んだ恋人も、鏡のために死んでほしいと思わないよ!」と思われる可能性が高いです。
(私だったらそう思ってしまいます)
この場合は、どれほど主人公にとって「その宝物」が大切であるのか、エピソードが必要になります。
例えば、鏡の場合は「恋人が死の間際に、この鏡を大切にして欲しい。その約束を守ってくれたら10年後に鏡を通して貴方に会いに行く」
というエピソードや設定があったらどうでしょうか?
主人公は死んでしまった恋人に再び会いたいと思います。
だからこそ、鏡を大切に思っているのです。
しかし、その鏡が10年を目前としたある日、家に入った泥棒に盗まれてしまったらどうでしょうか?
しかも、その泥棒は残虐非道で、そんな相手から取り返せるはずがない!と言われてしまったらどうでしょうか。
それでも、主人公は鏡を取りかえしに行くのか、行かないのか。
まあ、行かなきゃ物語が進まない、そこで終わりだ……(なんて、悲しい事はあまり考えないようにして)
そこで、大切な理由がハッキリとわかれば、読者だって「そうだね!それなら、その鏡を取りかえしに行く理由もわかるよ」「自分でもそうするね」
と共感しやすいはずです。
という事で、大切な宝物。
この場合は、なぜ主人公にとって大切なのか、そのエピソードが重要と言う事を覚えておいてください。
試練・悲劇を与える
今までは「奪う」事だったのですが、今度は「与える」事になります。
主人公から奪うのではなく、与える場合は「主人公にとっての試練や悲劇」は何かを考えてみましょう。
簡単に言ってしまえば「奪う」のは主人公にとって好きなモノ、大切なものですよね?
逆に「与える」ものは主人公にとって「嫌いなモノ・嫌なこと」になります。
何を与えればよいのかは主人公の設定によります。
例えば「狭くて暗いところが嫌いな主人公」だったとしたら、貴方は何を与えて苦しめようと思いますか?
……。
………。
様々な考え、答えはあると思います。
例えば「狭くて暗いところが嫌いな主人公」に対して、突然監獄に閉じ込められることになった!と悲劇を与えるのも良いでしょう。
エレベーターが突然停止し、閉じ込められてしまった。でも良いかもしれません。
このように、主人公の設定の「嫌いなモノ、嫌な事」ここに対して、一番の「試練・悲劇」は何か。
それを考えて、与えて主人公を苦しめてしまうのです。
前述の「好きなものを奪う」と「嫌いなものを与える」これの組み合わせは効果抜群です。
冒頭シーンで主人公の好きなものを奪ってしまい、更に次の展開で主人公の嫌いなモノを与えてしまうのです!
主人公の設定が「一人が嫌、暗くて狭いところが嫌い、本当に大切な恋人がいる」
だったら、冒頭で恋人を奪ってしまい、次の展開で監獄に入れられてしまったり、地下施設に閉じ込められてしまう。
こうするだけで、主人公にとっては最悪な状況です。
かなりの苦しみでしょうし、生きていく事すら辛くなるはずです。
こんな状況下で、この主人公はどうするのか。
物語として面白くなりそうではありませんか?
他人を苦しめる
これはおまけ程度に考えてください。
大切な人を奪うに近いのですが、主人公にとって「親密で、仲の良い」人を苦しめる。
そして、主人公に「大切な人を苦しみから解放したい! 助けてあげたい!」と思わせる方法です。
大切な人の苦しみは自分の苦しみにもなりますよね。
この場合は、主人公と苦しんでいる他人との親密度が非常に重要になります。
どうでもいい他人が苦しんでいたとしても「自分には関係ないや」で終わってしまいます。
(それでも助けるのであれば、それなりの理由は必要です)
自分にとって親密な相手が苦しんでいる。
そして、それを見て苦しみ主人公。
さらに、助ける事が出来るのは自分(主人公)しかいない!
そんな状況を設定してみるのはどうでしょうか?
最後に
主人公が思った通りに、何も苦労せずに順風満帆に行く。
そんな物語もあります。
しかし、物語としてのメリハリや緊迫感を出すための一つとして、やはり主人公に対する苦しみ。
これは効果が大きいです。
基本的には読者は主人公目線で物語を追っていくわけですから、魅力的で共感がしやすい主人公を設定。
その上で、その主人公に最大の苦しみを与えて、それを乗り越えさせる。
王道であり、定番ではありますが、これは外せない要素ではないかと私は思っています。