アニメや映画等から考えるノベルゲーム作り~他媒体の良い部分を取り入れる~ ノベルゲーム版「桃太郎」をアニメ風に作る!
アニメや映画等から考えるノベルゲーム作り~他媒体の良い部分を取り入れる~
貴方はノベルゲームを作るにあたって、何を参考にしていますか?
ノベルゲームが好きという方が多く、ノベルゲームは参考にしている人が多いと思います。
しかし、ノベルゲームを作るのに参考になるのはノベルゲームだけではありません。
逆に、他の媒体の良い部分を知った上で、参考にしてノベルゲーム作りに生かす、学べる部分だってとても多いのです。
今回は、アニメや映画等、他の媒体のどのような良い部分をノベルゲーム作りに生かすことが出来るのか、についてまとめてみます。
目次
ノベルゲームの長所は時間の制約が他の媒体より緩い所
「ノベルゲームの良し悪し編」でも同じような事を書いたのですが、ノベルゲームの長所の一つとして「時間の制約がとても緩い」があります。
ノベルゲームでは、何時間以内にしなければいけない、とか何ページ以内にしなければいけない。
このような映像やテキスト媒体にある時間・物量的な制約がほぼ無いのです。
そのため、シナリオライターが書けば書くほど、描きたい部分があればあるほど、どんどんボリュームを増やすことが可能です。
ただし、ノベルゲームと言えどテキスト量が増える=作業量や必要経費が増えるという問題点はあります。
そのため、シナリオライターとテキスト量の調整や、テキスト量が決まった状態で依頼される事もあるでしょう。
もちろん、これが同人ノベルゲームで趣味として作る場合は全く別。
本当にシナリオライターの好きなように書けます、書き放題が出来てしまいます。
商業なのか同人なのか、どこまで自由に書けるのか、ボリュームが決まっているのか等、様々な条件はあります。
アニメや映画、ドラマ、小説等の媒体は時間やテキスト量がある程度決められている(制約がある)
しかし、他の媒体……例えばアニメの場合は1話が基本24分程度と決まっていますし、映画の場合は長くても~3時間くらいと、時間の制約があります。
小説や漫画等ではページ数という制限があり、演劇や舞台でも時間という制限があります。
他の媒体の制限に比べると、ノベルゲームの制限がかなり緩いのです。
だってノベルゲームのプレイ時間は○○時間でなければいけない、であったり、テキスト量は○○、ページ数に換算すると○○ページとか、決まっていませんよね?
このノベルゲームの制限が緩い事で、シナリオライターが自由に描け、ボリュームも比較的自由に出来るという利点があります。
ただし、自由に描ける、書けるという大きな長所があるがゆえに、欠点もあります。
それが「物語が冗長になり易い」という事。
映画やアニメ等では最初の30分~1時間というのはかなり重要です。
連載漫画だと最初の数週間、数話が重要です。
(アニメで言う1話目、映画の冒頭)
その短時間で、その作品の良い部分を出して、興味を持ってもらわなければいけないからです。
もし、そこで楽しいと思ってもらえなければお客さんは映画館から出て行ってしまうかもしれませんし、見るのをやめてしまうかもしれません。
アニメだったら1話だけで、2話目以降はそもそも見ない!となるかもしれませんし、連載漫画でも次からは読まなくなるかもしれません。
なので、それらの媒体では序盤に、物語に引き込むためのシーンを持ってきたり、1話毎にしっかりとメリハリや起承転結を意識した構成になっている事が多いのです。
物語によっては「毎回が最終回みたいだ!」と思われるような構成にしている場合もあったりします。
(そのような物語からは、1話毎、1シーン毎にメリハリや起承転結を考え、盛り上がりを意識しているという事が感じられます)
これがノベルゲームの場合はどうでしょうか?
全部が全部とは言いませんし、それがノベルゲームの良さとも言えるのですが、以下のような作品が認められる(求められている場合も多い)のです。
・物語の序盤はヒロインとの日常がひたすら描かれる(数時間、場合によっては数十時間)
↓
・物語の終盤やキャラごとのルート分岐において大きな事件や盛り上がり展開に突入し、クライマックスへ
ポイントとしては「日常描写の長さ」
ここをじっくりと描く、例えばヒロインと仲良くなる過程に時間をかける事によって、その後の暗い展開やクライマックスとの対比になるのです。
……ああ、あんな平和な日常が崩されてしまった、それを取り戻したい! と最後に期待が高まるのです。
恋愛ゲームの王道パターンはこれですよね。
じっくりとヒロインとの日常を描写した上で、一気に突き落とし、最後にまた日常を取り戻す。
これはこれで良いと思いますし、ノベルゲームだからこそ出来る、じっくりと時間を掛ける事が出来るのです。
アニメや映画だったらこうはいきません。
最初の6時間を日常描写に使うなんて事になれば、そもそも時間内に収まらないか、視聴者が逃げてしまう可能性もあります。
(しかし、アニメであるような、毎回が日常回というほのぼの系、日常系はまた別です)
しかし、最初の日常描写が長ければ長い程、その部分がダルい、冗長だと思われてしまう可能性も多い。
これがノベルゲームの時間が自由に使える事の欠点になり得ます。
そこで、他の媒体の作り方をノベルゲームに生かしたら、この問題は解決できる、メリハリをつける事ができるのでは?
という事で、シナリオ担当に聞いたり、一緒によく考えた事を最後に書いてみます!
他の媒体の作り方、良い部分をノベルゲーム作りに生かす
ここからが今日の記事の本番になります。
冗長になり易いノベルゲーム。
しかし、他の時間やテキスト量に制限がある媒体の良い所を持ってきたらどうなるのか?
他の媒体の作り方を参考に、ノベルゲームに生かすことが出来ないのか?
その一つの答えがあるかもしれません。
(あくまで、私達の考え方、やり方ではありますが、もしかしたら少しは参考になるのかもしれません)
アニメ風に考えてみる
アニメの1話の構成をまとめてみると、以下のようになります。
1.冒頭映像(オープニング前)
2.オープニング映像
3.Aパート
4.CM
5.Bパート
6.エンディング(スタッフロール)
7.Cパート
この1~7の流れで約30分になります。
では、このようなアニメの構成をノベルゲームに活用してみたら?
まずは冒頭部分。
ここで、その話の掴みとなる話をさらっと出します。
(起承転結の起の部分をここで、出すと良いかもしれません)
そして、次にオープニング映像が入って……
次にAパート。
ここが、起承転結でいう承の部分を描く所になります。
伏線を仕込んだり、日常描写やキャラクターを描く部分ですね。
次にCMを挟んでのBパート。
ここで(場合によってはBパートの途中までは承が続いているかも)転を描く、もしくは結まで描く事になります。
そして、最後にエンディングの後のCパート。
ここが結になったり、その後の後日談を描く場所、オチに使えるかもしれませんね。
このように、アニメ1話として考えてノベルゲームの構成を見直してみると、メリハリや起承転結を意識した話作りが出来るのではないか?
と思うのです。
じゃあ、例えば連続テレビアニメ「桃太郎」をノベルゲームで作る場合で考えてみましょうか。
桃太郎の大きな流れは
桃太郎<主題:桃太郎が村人を苦しめる鬼を倒す>
<起>始まり
村人を苦しめる鬼を退治するために、桃太郎が旅に出発する。
<承>転までの伏線、過程
鬼が島へ向かう桃太郎、鬼を倒す仲間を得る。
<転>転換
鬼が島へ到着し、鬼と戦う。
<結>転の結果、どうなった?
鬼を退治して、村に平和が戻った。
このノベルゲームを作るとします。
もしも、アニメの構成を意識しないのであれば、起承転結の内、起や承の部分が冗長になってしまうかもしれません。
例えば
◆村人を苦しめる鬼を退治するために、桃太郎が旅に出発する。
⇒原作ではすぐに桃太郎が成長し、鬼退治に出発するように描かれていると思います。
しかし、ノベルゲームであれば、ここで桃太郎の心情の変化や、村人が鬼に襲われて苦しむ描写、鬼の悪行等、様々な出来事を描く事が出来ます。
ちょっと考えただけでも、以下のようなエピソードがあったのではないか?と考えてしまいます。
・桃太郎が鬼を退治しようと思う切っ掛け
⇒例えば、仲良くしていた村人が目の前で鬼に殺されたとか、大切なものを奪われた。
・いきなり鬼退治!なんて言っても、桃太郎が鬼を戦う為には力不足である
⇒様々な修行を受けたり、武術を学ぶ過程。
・残虐非道な鬼の描写
⇒村に火を放ったり、人々を殺したりして、その上で沢山のものを奪っていく等。
これらを描くにあたって、ノベルゲームの長所である時間を自由に使えるという事を最大に利用してみましょう。
桃太郎が鬼を退治しようと思う切っ掛け
⇒例えば、仲良くしていた村人が目の前で鬼に殺されたとか、大切なものを奪われた。
★このエピソードに3時間かける
・いきなり鬼退治!なんて言っても、桃太郎が鬼を戦う為には力不足である
⇒様々な修行を受けたり、武術を学ぶ過程。
★このエピソードに5時間かける
・残虐非道な鬼の描写
⇒村に火を放ったり、人々を殺したりして、その上で沢山のものを奪っていく等。
★このエピソードに2時間かける
あくまで、適当に時間を割り振っただけですが、何も考えずに思いついたテキストを書いていった場合、上記のようになってしまう可能性もあります。
上記の場合では、鬼退治に出発するまでに10時間もかかってしまうのです!
これじゃあ、長い。
という事で、アニメ風に考えてみましょう。
◆第一話「鬼の脅威」
1.冒頭映像(オープニング前)
★起「鬼が宝物を奪う為に村にやってくる」
⇒冒頭のインパクトとして、鬼によって村に放たれた火、炎上する村、泣き叫ぶ村人たち。
それをおじいさんとおばあさんに守られながら、遠くで悔しそうに見ている桃太郎。
2.オープニング映像
3.Aパート
★承「鬼が村で暴れている」
⇒桃太郎は鬼に対する憎しみから、おじいさんとおばあさんを振り払い、鬼のいる場所へと向かう。
そこで桃太郎は、いつも仲良くしていた村人Aの家が襲われ、大切なものを奪われそうになっているのを目撃し、鬼に戦いを挑む。
★転「桃太郎をかばい、仲良しの村人が死ぬ」
しかし、桃太郎はまだ弱く、鬼に金棒で殴られそうになる……そこで村人Aが桃太郎を庇い、桃太郎の前で死んでしまう。
立ちつくす桃太郎、鬼は桃太郎の事を無視して、大切なものを奪い去ってしまう。
4.CM
5.Bパート
★結「鬼が宝物を奪い尽くし、村から去る」
⇒鬼が去った後の村を茫然としながら歩き続ける桃太郎。
各地で泣き叫ぶ人、鬼に対する恨みの声を沢山聞く。
そして、桃太郎はその村の惨状や、村人の苦しみを見たり聞いたりしているうちに「鬼退治をし、この村に平和を取り戻す」事を心に誓う。
6.エンディング(スタッフロール)
7.Cパート
⇒桃太郎は、村から離れた場所に住む、格闘家を訪ね弟子入りを頼みこみ、修行をする事に決める。
と、このようにしてみましたが、どうでしょうか?
アニメの1話として何となく想像できたのであれば、良いのですが……。
これを30分で描き切れ、というわけではありません。
あくまで、アニメの構成を意識して、メリハリを意識したらどうですか?という方法の提案です。
アニメの1話として考えると、それなりにメリハリが付けられると思ってもらえたら嬉しいなと思います。
冒頭では「鬼の襲撃で村が燃えている」という衝撃的なシーンを入れる事で、インパクトを出します。
そしてAパートで描写をして、Aパートの最後で桃太郎を庇って村人が死んでしまう。
⇒ここで、一旦CMが入ります(というイメージ)
次に、CMが終わって、Bパート。
鬼が去った後の、村の惨状を描きます。
ここで、桃太郎は多くの村人の悲しみや苦しみを聞き、また自らの無力さを知る。
そして、Bパートの最後に桃太郎は「鬼退治をする!」と決断をするのです。
⇒ここでエンディング
最後のCパートで「鬼退治をする!」と決断した桃太郎の行動として「格闘家の弟子入りをする」を描写して、次回へ続く。
こんな感じで作ってみました。
ちなみに2話以降は作っていないのですが、タイトルとしては以下のようになるのかな?と少しだけ考えてみました。
◆第二話「鬼を倒す為に修行をする」
1.冒頭映像(オープニング前)
2.オープニング映像
3.Aパート
4.CM
5.Bパート
6.エンディング(スタッフロール)
7.Cパート
◆第三話「桃太郎、鬼退治へ出発する」
1.冒頭映像(オープニング前)
2.オープニング映像
3.Aパート
4.CM
5.Bパート
6.エンディング(スタッフロール)
7.Cパート
2話はまるまる一話を使って修行の話。
ここで、師匠から学んだり、辛い修行の描写をしたりして、最後に師匠を倒して修行を終える。
なんて1話にしてみるとか。
3話にして、やっと桃太郎は鬼退治へ出発します。
3話からは、鬼退治へ出発した桃太郎が鬼退治に協力してくれそうな仲間を探し、出会い、一緒に旅をする展開に突入します。
この辺りで、1キャラ1話くらいで考えてみても面白いかもしれませんね。
3話 サルと出会い、仲間になるまで
4話 キジと出会い……
5話 犬と出会い……
そして6話にして鬼が島に到着……。
とか、考えていけそうな気がします。
具体例がわかりやすかったかは、ちょっと自信がないのですが、このようにアニメの構成を意識してノベルゲームに生かす。
そんな事も出来るんじゃないかな?という事を書きたかったのです。
もちろん、今回は分かり易く1話30分のアニメにしましたが、映画や小説等、他の媒体の構成や技術もきっと生かせると思います。
例えば映画なんかはプロットポイント(物語の転換)という考え方があり、基本は~3時間くらいで話がまとまっています。
ちなみに、映画の構成については以下の本がお勧めですよ!(さらりと宣伝)
「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」
⇒公式サイトが見つからなかったので、Amazonへのリンク。
シナリオ担当Rの場合は、アニメや映画風に考えている事が多いようです。
貴方も、他の媒体の構成や技術をノベルゲーム作りに応用してみてはいかがでしょうか?