シナリオ編<オマケ3>「ボツシナリオ(3)ことばなし2」 第48回ウォーターフェニックス的「ノベルゲーム」のつくりかた

第48回 シナリオ編<オマケ3>「ボツシナリオ(3)ことばなし2」
執筆者:企画担当 ケイ茶


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他の会社さんや、個人のクリエイターがどうやってノベルゲームを作っているのかはわかりません。
ここに書かれているのは、あくまで私達「ウォーターフェニックス」的ノベルゲームのつくりかたです。


ケイ茶です。
今回もまずはボツシナリオを掲載します。

◆ボツシナリオを公開!~ことばなし2~


 

@僕
「初めまして。僕に愛をください!」

もう何度繰り返したかわからない言葉を、投げかける。

それは半ば、やけだった。とにかく人がいたから叫んでしまえと、そんな衝動のままに口を開いた。

けれど、本当はもう答えなんてわかっている。

どうせこの後はいつものように……。

@女性
「え……っと。あなた、今の自分の状態をわかっているの?」

@僕
「え……っ?」

嘘、でしょ?

……あれ?

@僕
「そんな。まさか。これって……本当に?」

信じられない。こんな事があっていいんだろうか。

だって、僕が狂ってしまったわけじゃなければ、今、たしかに……。

@僕
「ねぇ。……もしかしてという可能性の話なんだけど、君は今、僕に返事をしてくれたの?」

@女性
「えぇ。そうだけど」

@僕
「普通、に?」

「僕に対して顔も歪めずに、けなさずに、怖がらずに、唾も吐かずに、嫌悪感の欠片もなく、普通に……話してくれたの!?」

@女性
「はぁ? 何言ってるの、貴方」

「たしかに、いきなり愛とか言われて戸惑ったけれど……別に、そんな失礼な態度はとらないわよ」

「そもそも、私を構成する言葉の中に『嫌悪』なんて存在しないもの」

@僕
「あ、あ……。あ、あ、あ」

@女性
「なによ?」

@僕
「凄い……凄い! 奇跡だ!」

@女性
「え? ちょ、っと。貴方、『目』から『水』が溢れて『涙』になってるわ」

「まさか、泣いているの?」

@僕
「う、ん。だって、っ、だって……!」

この状況で、泣かずにいられるはずがない。

目の前の女性が驚いているから、涙を止めた方が良いとは思う。

けれどどうしても、次から次へとこぼれ落ちてくる。

「だってっ、君が……君がっ、返事を、してくれるんだ!」

「こんなっ、風に……っ、ひっく、まともに相手をしてくれる……!」

こうして誰かとまともに言葉を交わすのは、何時ぶりだろう。

前回の会話がいつだったのかなんて、もう遠い彼方へと霞んでしまっている。

@女性
「まともに、って……。まだ数分程度しか話していないじゃない」

@僕
「数分!」

「そうか。君はもう、僕と数分間も話してくれているんだね……!」

「すごく、凄く嬉しいよ。ありがとう!」

@女性
「どういたしまして……で、良いの?」

@僕
「あ……」

@女性
「今度は、何?」

@僕
「ど、どういたしまして、だって……!?」

「そそ、そんな言葉……初めて言われたよ!」

凄い。奇跡の連続だ。

今日はきっと、僕の人生最高の一日に違いない。

@女性
「あぁ、そう……」

「それで……改めて訊くけれど、貴方は現状を理解しているの?」

@僕
「現状、っていうと……」

@女性
「どんな風にしてここに来たのか、説明して」

@僕
「えっと、たしか食事を終えて路地裏を歩いていると、いつもの人から貶されたんだ」

@女性
「貶された? 何か、酷い言葉を言われたの?」

@僕
「うん。邪魔だとか、近寄るなとか、汚いとか」

「そんな事を言われ続けていたら、急に光が射したんだ」

「その光が強くて、眩しいから目をつぶって――次に開いた時には、この場所だったよ」

@女性
「へぇ。そういうものなのね」

@僕
「不思議な事もあるものだよね」

@女性
「あなた……感想は、それだけなの?」

@僕
「え? うん、まぁね」

こんな事は初めての経験だから、少し驚きはあった。

けれど、そんな驚きなんてもう遠い過去の話だ。

この、目の前の女性が僕と話してくれるという奇跡に比べたら、その程度の不思議なんてどうでもいい。

@僕
「ねぇ。それより、君は僕と会話してくれているよね」

「これはつまり……僕に愛をくれるって事!?」

@女性
「『愛』?」

@僕
「うん。愛をください!」

「僕、どうしても愛がほしいんだ」

@女性
「……わかったわ。少し待って。探してみるから」

僕が詰め寄ると、女性は少し下がって背後の大きな箱を開けた。

それから、物がぶつかるような音がする。

彼女の言葉からすると、探してくれているんだろうか。

……愛を?

@女性
「もしもあるとしたら、この辺り……かしら」

@僕
「あの。愛って、探すものなの?」

@女性
「えぇ。私は今、あなたへの『愛』なんて持っていないから、ここを探すしかないわ」

「先代が、『愛』を残していたら良いのだけれど……」

ぶつぶつと呟きながら、女性が箱の中で手を動かす。

すると、その動きに合わせて中に入っていたらしい物がこぼれ落ちた。

これは……何だろう。文字の、置物?

転がった文字は、『黒』『夜』『明日』『目』など、統一性があるようには思えない。

落ちてくるそれを、とりあえずまとめて置いていると、不意に女性が溜め息を吐いた。

@女性
「……ごめんなさい。『愛』は今、切らしているようだわ」

@僕
「えっと……愛って、そういうものなの?」

さっきから、何かが変だ。

具体的に愛が何かと言われると難しいけれど、僕の思う愛は、切らしているとかそういうものではない気がする。

「愛っていうのは、こう、心の中にあるものじゃないの?」

@女性
「そうね。あなたの言うとおり、私の『心』の中には『愛』が存在しているわ」

そう言うと、女性は手を胸のあたりにあてた。

次いで、

@僕
「え……っ!? な、なにしてるの!?」

その指が、彼女の体の中に刺さった。

いや、これは沈んだという方が正しいのかもしれない。

@僕
「痛く、ないの……?」

@彼女
「『皮膚』や『筋肉』、『神経』は除けたから平気よ」

泥に手を入れた時のように、ずぶずぶと彼女の指が沈んだかと思うと、そのまま、左右に揺れる。

彼女の手は、さっき箱の中を探っていた時と同じ動きをしてから、体の中から出てくる。

その手の上には、また文字があった。

@僕
「『愛』……だ!」

@女性
「貴方が求めているのは、哀愁の哀や、合間の合ではなく、この『愛』なのよね?」

@僕
「うん。そうだよ。その愛が、ほしいんだ」

「それを……くれるの?」

@女性
「いいえ。ただ、あなたの求めるあいがどの文字なのか、確認しただけよ」

@僕
「……そ、っか」

@女性
「この『愛』は私にとって大切なものなの」

「悪いけど、貴方にあげる事はできないわ」

女性は淡々と言って、手の上の『愛』という文字を胸にあてる。

すると、その文字は何事もなかったかのように、彼女の体の中に入っていった。

@女性
「それで、改めて話を……って、あなた、どこかへ行く気?」

@僕
「うん。移動しようと思う」

@女性
「ちょっと。あなた、ここがどこかもわかっていないんでしょう?」

@僕
「僕にとって、そんなのは些細な問題だよ」

「ここがどこだろうと僕がやる事は一つ」

「愛を求めて、さまようよ」

@女性
「え。ちょっと、何言ってるの?」

@僕
「だって僕は、立ち止まってはいられない」

「愛が、ほしいんだ!」

「たくさんの生物から、愛をもらいたいんだ!」

目を瞬かせている彼女は、僕と真摯に向き合ってくれた。

とても良い人なんだと思う。

でも残念ながら、僕が求めているのは良い人ではない。愛なんだ。

@僕
「こんな僕と、1分以上も話をしてくれてありがとう」

「とても、嬉しかったよ」

;▲ここから

愛をくれそうな人がいるといいな、と。

軽い気持ちで建物から出て、すぐに息を呑む。

@僕
「なに……これ」

空が、黒で覆われていた。そして見渡す限りに見えるのは、文字。

地面が全部、文字で埋め尽くされているらしい。

文字。文字。文字。僕がいるこの建物以外には、とにかく言葉しかない。

遠くの方に山が見えたけれど、それもよく見れば木々に覆われているわけではなく、ただの言葉の山だった。

@僕
「『山』『空』『明日』『朝』『卵』『新聞』……」

やはり統一性の感じられない言葉たちが、至るところに散らばっている。

呆然とそれを眺めていると、背後からため息が聞こえた。

@女性
「驚いているみたいね」

@僕
「う、うん。こんな景色を見るのは、初めてだから……」

@女性
「……そう。初めて、なのね」

女性の言葉には、何か含みがあるように感じた。

一体何だろう。

気になって振り返り――目を見開く。

@僕
「え……っ!?」

@女性
「あら? また何かに驚いたの?」

「あなた、今、『心臓』が飛び跳ねたわよ」

さっきまでと同じ、女性の声がする。

でもそこに、女性の姿はない。あるのは『生物』という文字だけだ。

その文字はまるで呼吸をしているかのように、声に合わせて揺れる。

@女性
「……大丈夫? あなたの『手』、震えているわ」

@僕
「な、なに……?」

『生物』から突然、『手』という文字が伸びてくる。

それを凝視すると、『手』という文字は『指』『爪』『掌』『皮膚』などの様々な文字の塊でできているんだと気が付いた。

無数の文字が連なって、『手』という文字や『生物』という文字になっているらしい。

見ている間にも近付いてくる『手』を、思わず避ける。

@女性
「……」

@僕
「あ。ごめん。つい……」

「あの。君は……もしかして、さっきまでの、君なの?」

@女性
「当然でしょう。私という『生物』はひとつよ」

@僕
「でも、それならなんで、そんな風に体が、変わって……」

@女性
「変わった? 何言ってるの?」

『生物』の『首』が傾く。

「……大まかに見たけれど、私の構成はさっきと何も変わっていないわ」

@僕
「そ、そう……なんだ、ね」

正直言って、わけがわからない。少し不気味だとも思う。

けれど、この女性はさっきも、今も、僕ときちんと会話をしてくれている。

その内容が意味不明な事ばかりだけど、悪い存在ではない、はずだ。

だから、気にしない事にしよう。

@僕
「そ、っか。わかったよ」

「君は、そういう体の人なんだね」

「ちょっと変わってるけれど、個性的で良い……と、思うよ」

言い残して歩きだそうとすると、地面の文字に足をとられてバランスを崩してしまった。

転びそうになり、とっさに手をつく。

@僕
「えっ……!?」

その、僕の手も……『手』という文字に、なっていた。

@僕
「これ、どういう事……?」

立ち上がると、おそるおそる自分の体を見下ろす。

下げていった視線に映るのは、ただの――文字の塊だった。

@僕
「う、うわぁあっ!」

なんだ、これ。おかしい。僕の体が、ない。

『胴体』『足』『手』。そんな文字しか、目に入らない。

こんなのは、変だ。

@女性
「本当に、大丈夫?」

「さっきから、様々な言葉が震えているけれど……」

@僕
「っ……!」

また、『生物』から『手』が伸びてくる。

文字が、近付いてくる。

この文字が、僕の『手』に触れたらどうなるんだろう。重なったら、何が起こるんだろう。

わからない事が、こわい。

そう思った瞬間、僕の『体』から、『恐怖』という文字が現れた。

@僕
「えっ? ちょ、っと……」

その文字が、暴れる。その力は強く、押さえつける事ができなかった。

そうして……。

僕は『恐怖』に突き動かされるままに、駆け出した。

;▲

文字の上を、ひた走る。

そうしているうちに、『恐怖』は膨らんでいた。

僕の心臓の鼓動に合わせて、ドク、ドクと少しずつ大きくなっていく。

それが怖いと思うと、また、『恐怖』が膨れ上がる。

『平常心』という文字が、僕の『体』から抜け落ちていく。

口から吐く『息』は乱れてぐちゃぐちゃで、『手』や『足』が小刻みに震える。

僕の体は、一体どうなってしまったんだろう。

落ちていく言葉の残骸が、地面の文字と混ざってしまったように、僕自身もこのまま消えていくんじゃないかと感じる。

自分から文字の上を走り出したはずなのに、これ以上、こんな文字ばかり見ていたくなかった。

文字ではないものの上に、立っていたい。

そう思って視線をさまよわせていると――ふと、建物が目に入った。

さっきの建物と同じ形をしているけれど、僕が走ってきた方向を考えれば、別の建物だろう。

あの場所が、いい。

敷き詰められた文字の中に、ぽつんと建っているそこへと、僕は足を向けた。

;▲

@僕
「あ……!」

建物の中に入って息を吐くと、さっきまでボロボロとこぼれ落ちていた『息』という文字が出なかった。

その事にほんの少し期待を覚えながら、体を見下ろし、

@僕
「良かった。元に戻ってる……」

今度は、さっきよりも深く息を吐いた。

改めて見た体は、さっきまでの文字の塊じゃない。

ちゃんと、形としての手や足がある。

@僕
「さっきまでのは、夢……って事は、ないか」

外へ視線を向ければ、やはり文字ばかりの景色が広がっていた。

これ以上それを見ていたくなくて、今度は部屋の奥の方を見る。

と、奥の方に黒い門があった。

@僕
「なんだろう……?」

「って、あ……!」

門の先にぽっかりと開いた空間。そこに、見慣れた景色が見える。

あれは僕が昨日彷徨った道。あそこは、僕の以前の家で、あっちは最近お気に入りのレストランだ。

……なんだ。そんなに遠くにいたわけじゃなかったんだ。

これなら、すぐにいつも通り、愛を求める事ができる。

そう思って、外に向かって歩き出し――。

@僕
「うわっ!」

……何かに、阻まれた。

@僕
「なに? ……どういう事?」

間に、ガラスなどの何かがあるようには感じられない。

なのに、隔たれている。

@僕
「僕は……行くんだ!」

この場所は、変な場所だ。

そしてあの女性は、ここには愛はないと言った。

そんな所にとどまっているなんて、時間の無駄だ。

そう何度も足を動かすけれど、やっぱり何かに阻まれてしまう。

手も、指も、爪の先すらもだめだった。

@僕
「本当に、なんなの……?」

見える景色に手を伸ばす。でも、何かに当たる。

見えるその景色に。見慣れた場所に。近付きたいのに、近付く事ができない。

むしろ、そう思えば思うほどに遠ざかっているような気がする。

@僕
「これは、見えるだけ、なのかな」

そうだ。これは、映像をうつす機械なのかもしれない。

「だから、外に繋がっているわけじゃないとか……」

@女性
「いいえ。そこはたしかに、あなたの言う外――別の世界へ繋がっているわ」

「ただ、今のあなたは出る事ができないのよ」

@僕
「うわぁっ!」

目を丸くしながら振り返ると、さっきの女性が立っていた。

ちゃんと、最初に見た彼女の姿だ。もう、『生物』という文字じゃない。

その事も気にかかる。けれど、それよりも重要なのは彼女の言葉だ。

@僕
「僕では出る事ができないって……それは、どうして?」

@女性
「……あなたが、汚れに塗れてしまっているからよ」

@僕
「僕が、汚れてる? ……どこが?」

自分の体を見下ろす。けれど、特別汚れているようには見えない。

もしかして、背中の方なんだろうか。

@女性
「……今目にうつっている形の話じゃないわ。汚れているのは、あなたを構成する文字よ」

「気になるのなら、そこの窓から手を出してみて」

@僕
「う、うん……」

とりあえず言われるがままに、窓を開けて右手を伸ばす。すると。

@僕
「うわっ」

僕の手はまた、さっきみたいに『手』という文字になった。

思わず手を引きかけたところを、横から伸びてきた女性によって掴まれる。

@僕
「ひっ……!」

@女性
「大丈夫。何も怖くなんかないから、よく見て」

「あなたのその『手』の中に、『汚れ』が混じっているでしょう?」

@僕
「『手』の中に……?」

深呼吸をしながら、言われた通りに『手』を凝視する。

するとまた、様々な文字が見えた。

『皮膚』『爪』『指』『指紋』『骨』『筋肉』……それらの中に、女性が言うように『汚れ』というものが混ざっている。

それは僕の『手』だけで、女性の『手』に『汚れ』はない。

@僕
「この『汚れ』があるから、行けないの……?」

@女性
「そうよ。『汚れ』は、あの門をくぐる事ができないわ」

@僕
「じゃあ、この『汚れ』さえなければ、いいんだね?」

だったら話は簡単だ。

さっき、女性は『愛』という文字を取り出していた。

あれと同じように、僕もこの『汚れ』という文字をとってしまえばいいはずだ。

そう思って『汚れ』という文字を摘んで、ひっぱってみる。

@僕
「は、ぁっ……!」

けれど、それは完全に『手』の中に混じっているようで、ぴくりとも動かない。

@僕
「な、なんで……?」

@女性
「無駄よ」

「そういう汚れは、こびりついてしまっているの」

@僕
「だったら……ここに、刃物はないの?

「あるなら貸してほしい」

@女性
「一応出す事はできるけれど……何をする気?」

@僕
「切り落とす」

@女性
「『汚れ』は、切る事もできないわ」

@僕
「それなら『手』ごと、切り落とす」

@女性
「……『手』を置いてまでも、ここから出たいの?」

@僕
「うん。僕は、愛がほしいから」

@女性
「そう。けれど……その『手』を置いても無意味よ」

「ねぇ。右手だけではなくて、左手も、よくご覧なさい」

「そこにも『汚れ』が含まれているでしょう?」

@僕
「あ……」

「だ、だったら……」

@女性
「左手も取るかしら?」

「それでも、駄目よ。あなたの『全身』に『汚れ』はあるの」

「『体』にも、そして『心』にも。すべてに染み付いて……ひどい有様なのよ」

@僕
「そんな……っ!」

@女性
「『汚れ』ごと置いていこうなんて、諦めなさい」

@僕
「でも……っ、これがあるから、僕はここから出られないんだよね?」

「だったら、どうにかして取るしかないじゃないか!」

@女性
「……」

@僕
「ねぇ。何か方法があるのなら、教えてほしい」

「この『汚れ』を取って、外に出る方法はないの?」

;※ここから

@女性
「あるわ」

@僕
「それは?」

@女性
「簡単よ。ただ、この世界にいればいい」

「この世界は言葉を浄化する力を持っているから、ここに滞在しているだけで『汚れ』は消えていくわ」

「全身から『汚れ』が消えたら、あなたはそこから出る事ができるはずよ」

@僕
「じゃあ、僕は少し我慢すればいいだけなんだね」

良かった。

ここに留まらなきゃいけないのは面倒だけど、いるだけなら簡単だ。

@女性
「さて。……言うべきことは、これぐらいかしら」

@僕
「あ。あの、いろいろ説明してくれて、ありがとう!」

「君がいてくれて助かったよ」

「君は、本当にいい人だね!」

@女性
「いいえ。気にしないで」

彼女は、静かに首を振った。

そうして、なぜか僕の方に近付いて来る。

@僕
「え……っと?」

なんだろう。少し、悲しげな顔に見える。

それに、また、彼女が手を伸ばしているけれど……。

あ、れ?

なにか変な感じがした。

そう。何かが、頭から抜き去られていくような、感覚が……。

@女性
「ねぇ」

※女性の手の上に脳という文字が乗っている。

「私も、あなたと会う事ができて嬉しかったわ」

「……ありがとう」

…………。

……。

;▲

@僕
「……ん?」

「あれ? 今、一体何が……?」

女性が手を伸ばしてきた事と、頭の中が空っぽになったような感覚を覚えている。

そのあと、女性が何かを言っていたような気もする。

けれど、具体的に何をされたのか、そして何を言われたのかはわからなかった。

@僕
「そういえば……あの人、いなくなっちゃったのかな?」

さっきまで目の前にいたはずなのに、姿がない。

どこへ行ってしまったんだろう。

首をかしげながら、視線をさまよわせる。と。

@僕
「え……っ」

視界の端にそれをとらえて、息を呑む。

さっきまでの女性はいなかった。

『生物』という文字があるわけでもない。

かわりに――人間の頭のようなものが転がっていた。

@僕
「な、に……?」

いや、違う。

これはただの頭じゃない。髪はあるけれど、顔がなかった。

正確に言えば、鼻がない。耳がない。口がない。目も片方しか残っていなくて、一つ目だ。

それでいて、前頭部からは人の手のようなものが生えており――動いていた。

頭に生えた手のようなものが、建物の外にある何かの文字を掴む。

そうして、掴んだ文字を門の方へと投げた。

文字が門の向こう側へ消えていく様子を見つめると、それはまた、文字を掴む。

そんな動作を繰り返す手が、先程見た女性の手に似ていると感じるのは、気のせいだろうか。

その頭の髪型が、瞳の色が――あの女性のものと同じだと思うのは、僕の目がおかしくなったんだろうか。

僕の頭が、狂ったんだろうか。

それとも、この場所が。この世界が、狂っているんだろうか。

@僕
「あ……」

呆然とする僕の前で、得体の知れないその手は、淡々と文字を投げ続けていた。

;▲

@僕
「うぅ……」

僕は、部屋の隅で膝を抱えて座る。壁をにらみつける。

そうするしかなかった。

この建物の外へ出るのは、怖い。

また体が文字になってしまうのかと思うと、進んで行こうとは思わない。

けれど、この部屋にいるのも――本当は平気じゃない。

だって、まだ動いている。あの、よくわからない頭とその手が、文字を投げ続けている。

こうして背中を向けていても、気になってしまう。

ガラガラと文字をかき分けるその音が、耳にこびりつく。

さっきから、おかしな事の連続で、どうにかなってしまいそうだ。

早く、こんな場所から出てしまいたい。

唇をかみしめて、また門に近付いてみる。

ほんの少し、期待をもってみたけれど……やっぱり何かに邪魔されてしまった。

@僕
「……まだ、だめなのか」

溜め息を吐く。そこに、

@僕
「うわっ!」

『刃』という文字が飛んできた。

とっさに避けると、その文字は僕の顔の横を通って、門の中へと吸い込まれていく。

@僕
「……羨ましい」

僕は通る事ができないのに。どうしてあの文字は通すんだ。

そう、恨みがましく門を見つめる。

そのまま、無音の中で門とのにらみ合いを続けて――ふと、違和感を覚えた。

そうだ。どうして無音なんだろう。

さっきまで、ガラガラと文字をかき分ける音がしていたはずなのに。

気になって、おそるおそる、あの奇妙な生物の方を見てみる。と。

@奇妙な生物
「……」

@僕
「あ……」

目が合った。

それが気まずくて慌てて視線を逸らすと、頭から生えたその手が、左右に動いているのが目に入った。

そこには何もないはずなのに、はらうように揺れる指。

同時に、僕に突き刺さる視線。

もしかして、これは……。

@僕
「ここに立っていちゃだめ、って、事……?」

「僕が、邪魔?」

問いかけに、返事はなかった。

けれど、一応、門の前から移動してみる。

すると。

@奇妙な生物
「……」

奇妙な生物は僕から視線を離して、また、さっきまでと同じように文字を投げ始めた。

今の一連の流れが、偶然だとは思えない。

試しにもう一度門の前に立ってみると、やはり奇妙な生物の手が左右に触れる。

そしてまた、僕が移動すると、文字投げが再開される。

……これは、つまり。

あの奇妙な生物には、思考能力がある、という事だろうか。

@僕
「そんな事がわかっても……」

どうすればいいんだろう。

あの女性は、ここに留まっていれば『汚れ』とやらが消えて、元の場所に戻れるようになると言っていた。

でも、それが一体いつの事なのかは、言っていなかった。

数分後? 一時間後? 一日後? 一ヶ月後? 一年後?

それとも――もっと、先?

@僕
「……具体的に、訊いておけば良かった」

後悔しても、後の祭りだ。

現状、彼女はここにいないんだから。

『汚れ』が消えるのがあと少しの事だと信じて、ここで待つしかない。

;▲

そうして、どれぐらいの時が過ぎたんだろう。

膝をかかえて壁をにらんで。たまに、門をくぐろうと試して。駄目だと知って、また壁をにらんで。

そんな事を何回も繰り返したけれど、さすがに、耐えられなくなってきた。

終わりがわからない状態で待ち続けるのは、苦痛だ。

@僕
「……はぁ」

だから、僕は一つ息を吐いて立ち上がる。

さすがにこれ以上、この部屋でじっとしていられない。

あの女性を、探そう。

そう決めて、極力、奇妙な生物の姿を見ないようにしながら扉の方へと移動した。

;▲
そうして見える世界は、やっぱり――文字しかない。

でも、こんなものがなんだ。

@僕
「愛のために、僕はここから出るんだ!」

できる限り明るい声を出して、勇気を奮い立たせながら一歩。思い切って、建物の外へ出た。

けれど。

@僕
「う、っ……」

その瞬間、また、僕の全身が文字になった。

わかっていたつもりだったのに、駄目だ。どうしても、怖い。

すぐに体から力が抜けてしまい、その場に尻餅をつく。

――その手も、やはり『手』という文字だ。

@僕
「う、うぅ……っ」

そんなものを見たくはなくて、目をつぶる。

でも、つぶったはずなのに文字が消えない。

『瞼』という文字が、目の前にある。

@僕
「なんなんだ、よぉ……!」

目を閉じても文字。開けても文字。文字。文字。文字。

嫌になって、いっそ叫んでしまえと口を開いた、その時。

@僕
「えっ? う、わっ!」

何かに『手』を掴まれて、引かれた。

いや。今のは、引かれたというよりも投げられた、に近い気がする。

と、いう事は……。

@僕
「やっぱり……」

僕の手を握っているのは、あの奇妙な生物だった。

たぶん、他の文字と同じように、僕の『手』という文字も投げようとしたんだろう。

それは、なんとなく理解できる。

ただ……今、僕を掴んだ指の動きは、思いの他優しかった。

柔らかく、包み込むような暖かさがあった。

それとよく似た感覚を、僕は知っている。

ついさっき、あの女性が僕の手を掴んだ時も、そうだった気がする。

@僕
「ねぇ。君は……一体、なに?」

@奇妙な生物
「……」

そっと手を伸ばして、奇妙な生物を持ち上げる。

すると、奇妙な生物はまた僕に目を向けてきた。

そうして僕を見たまま、指でどこかを示しているようだったので、それを辿ってみる。

@僕
「えっと……僕? じゃなくて……」

「あ。そうか。耳、かな?」

そういえば、この奇妙な生物には耳がない。

だから、僕の声が聞こえない、という事を示しているんだろう。

@僕
「やっぱり、君にはしっかり意志があるみたいだね」

「どうせなら、話がしたいんだけど。紙とペンは……ないね」

筆談ができれば良かったのに、見た限りでは何もない。

何か、他に会話をする方法はないんだろうか。

耳がなくても、僕の言葉を理解してもらう方法……。

……。

……耳が、ない?

そうだ。耳がないから、僕の声がとどかない。だったら、耳があればいいのか。

あの女性は、体は文字で構成されている、という風な事を言っていた。

そして実際に、自分の体から『愛』という文字を取り出していた。

もその事から考えると……体に、文字を足す事ができるのかもしれない。

@僕
「やってみよう!」

何もしないよりは、試した方がいい。

そう思って、建物から出ることはせず、手だけを伸ばして外の文字を漁る。

すると、すぐに『耳』という文字が見つかった。

@僕
「次は、これを……」

『耳』という文字を両手でもって、慎重に、奇妙な生物の頭に押し当ててみる。

すると、その文字は皮膚をものともせずに、ずぶずぶと沈み込んでいった。

そして。

@僕
「あ……!」

「やった。思ったとおりだ!」

元からそこにあったかのように、自然な形で、頭に耳がくっついている。

……すごい。不思議だ。

指でその耳を引っ張ってみるけれど、今度はそう簡単には取れない。

あとは、これがちゃんと、耳としての機能を持っているのかが問題だ。

@僕
「あー、あー。ちょっと、僕の話を聞いてくれるかな?」

@奇妙な生物
「……」

耳元で囁いてみると、また、目が合った。

それを了承だと勝手に受け取って、言葉を続ける。

@僕
「これから、僕は君にいくつかの質問をするね」

「それで、はい、だったら上。いいえ、だったら下を指差してほしい」

「じゃあ、試しに……いくよ」

「まずは……僕のこの声が、聞こえている?」

@奇妙な生物
「……」

その手が、上を指差した。

@僕
「……わかった。それじゃあ、次だよ」

「君は、僕の事が見えている?」

@奇妙な生物
「……」

また、上。つまり肯定だ。

@僕
「君には、意志がある?」

@奇妙な生物
「……」

上だ。

@僕
「君は……」

「君は、さっきまで僕と会話していた……あの女性だったり、するのかな……?」

@奇妙な生物
「……」

@僕
「ねぇ。どう、なのかな?」

「君は、あの女性、なの?」

@奇妙な生物
「……」

急に動きを止めたその手を、固唾をのんで見守る。

そうして、数秒ほど時が過ぎ。

静寂が場に染み渡った頃に、ゆっくりと。

その指先が指し示したのは――やはり、上だった。


 

以上です。
前回のシナリオに、+して主人公に特徴を持たせ、ヒロインが奇妙な生物になるというインパクトを加えたのが第二弾の修正版。

前よりは良くなった。
と感じたのですが、結局この先の方向性が見えず、自分達の満足のいくものにはならない。
と判断してここで「ことばなし」そのものの制作を断念。
企画~シナリオまでが全部ボツになりました。

ちなみに、公開するのは恥ずかしいのですが、私が作ったプロットも掲載してみます。
興味がある方はどうぞ。


※不完全プロットです(途中でボツになっているため。矛盾点や読みにくい点等が多くあります)
★言葉磨き人とお手伝いさん

◆設定(世界)

・汚い言葉が穴から出てくる(落ちてくる)

・言葉を浄化する方法
 一つ一つの言葉を綺麗に磨く必要がある。
 本当に汚い言葉は長い年月、綺麗な言葉の中に埋めて浄化させないといけない。

・浄化した言葉は別の穴から外に出て行く(入っていく)

・ヒロインの命には汚い言葉負の言葉が入っているため、はじかれてしまう。

・言葉を磨く人がいなくなってしまったらこの場所も、言葉もなくなってしまう。
 (汚い言葉で汚染され、全てが真っ黒になってしまうから)

・世界はすべて言葉によって作られる。

・元となる言葉が生まれ、死ぬ場所が「言葉の世界」
 →死んだ言葉は磨かれ、再生し、新たな言葉として旅立っていく。このサイクルがずっと続いている。

◆設定(ヒロイン)

(言葉磨き人としての仕事)

・代々、一人が受け継いできた運命

ヒロインも先代から引き継いでいる。
先代が死ぬ前に次の世代が生まれる仕組み。

※主人公の存在は?次の世代じゃないの?
見よう見真似で作ってしまった「お手伝い言葉」
代々引き継ぐべき「言葉磨きの力」という言葉は先代が死んだときに自動的に引き継がれていく。

※お手伝い言葉
お手伝い用に人型や動物型の言葉を命から作ることができる。
しかし、作り手が消滅したときに、それらも一緒に崩壊してしまう。

※別の世界に行けば消滅しない?
先代も逃がせるお手伝い言葉を何人か外の世界に解放していた。

ヒロインは主人公に、それらの言葉がいなかったかどうかを最初のうちに聞く!
★主人公から普通に見える人や動物
 お手伝い言葉には別の沢山の言葉がくっついている事が多い。

★主人公は汚くなって戻ってきた。
 主人公はヒロインによって作られた言葉で特別。(お手伝い言葉)
 お手伝い言葉には他の言葉がくっつけられる。

※普通に生きている人間は余分な言葉をつけることができない。(言葉の効力が直接聞くわけではない)
 体を通り抜けて心にダメージを与える程度。

★別の世界に行ったお手伝い言葉が戻ってくる条件。汚くなってきたら戻ってくる。
 その時に、そのお手伝い言葉を作った言葉磨き人がいなければ、戻ってきた瞬間にバラバラに消滅してしまう。
 ※それは先代のときに目にした光景。
  だから、なるべき戻ってこないことを祈って送り出す。向こうの世界で幸せな一生を送るように祈る。

(ヒロイン)
・汚い言葉はヒロインの体に入った「死」という言葉に引き寄せられヒロインに突き刺さる。

●プロローグ

一人の少女が言葉を組み立て、同じ年の一人の少年を作り出す。
二人は言葉はわからないけれど、仲良くなりいつも一緒に遊んだり、少女の仕事を手伝ったりしていた。
また二人で言葉を覚えたりと幸せな日々を過ごしていた。

●少年(高校生くらい)~現代~

毎日のように施設育ちである事や、生い立ちが不明であることでイジメられている少年。
力の暴力ではなく言葉の暴力によって、少年は徐々に元気をなくしていく。

そんなある日、少年はいつものように周りの沢山の同級生から言葉でイジメられて、いっその事死んでしまいたい
とまで思うようになる。
そこで、少年の周りの世界が歪み、気づいたときには今までとは違う世界にいた。

●少年と少女~言葉の世界~

少年は不思議な世界にやってくる。
心臓の辺りが猛烈に痛み、立ちくらみがする中少年は歩き続ける。

そこには言葉と思われる形をしたものしかなく、空も真っ黒、ただ一部に巨大な穴が二つ開いており
ひとつからは言葉が出てきて、もうひとつには言葉が入っていっていた。

世界を歩く少年。
ふと、見ると座りながら文字を磨き続けている少女がいる事に気づく。
少年は少女にこの世界のことを訪ねるが、いまいちよくわからない。
逆に少年は少女に幾つかの質問をされてしまう。

●少年の体調不良
質問を受けているうちに、少年は倒れてしまう。
気づくと横になって寝ている少年。そして、少女が心配そうに少年を覗き込んでいる。

少女が少年の体についた汚い言葉を幾つか引き抜いて、とりあえずは大丈夫だろうと少年に話しかける。
少年は意味がよくわからないが、疲れもありそのまま寝てしまう。

体力が回復した後、少女は少年に元の世界に戻りたいかと質問をする。
少年は戻りたくは無いという。

少女は少年が元の世界にいますぐに戻りたいわけではないと知ると、一緒にお手伝いをして欲しいと少年に
話を持ちかける。
少年は何にしても、やる事、生きる目的すら失ってしまったために軽く承諾して少女の手伝いをする事になる。

●少女のお手伝いと日常

少女の手伝いとは言葉を綺麗に磨くこと。
毎日毎日、様々な言葉を磨いていく。
磨き終わった言葉は綺麗になり「空」だったら「空」の綺麗な風景が二人の前に広がるし
「水」を沢山磨き終われば「海」「川」が二人の世界に出現する。

また「羽」という文字を磨いて「空」と合わせて、二人で羽をつけて空中散歩という事もできる。
※不思議なことに言葉は少女の命令の通りに動く。

ただし、磨き終わった言葉はずっとその場に存在するのではなく、磨き終わって数日以内には全て穴の中に
吸い込まれていき、結局二人の世界にはまた言葉だけしか残らない。
それでも、少女は毎日毎日新たな言葉を磨き続ける。

少年は少女に、少女の事や世界のことを聞くが、あまり詳しくは教えてもらえない。
逆に少年の世界のことを少女が聞いてくる事が多い。

<イベント=危険な負の言葉>
主人公が単純にイジメで言われたしね等と比べて別格の言葉の重さ暴力。
念がこもっており、触れただけでも強烈な痛みを感じる。(主人公が触ろうとした瞬間に注意するヒロイン)

念が篭った「負の言葉」は触れるだけでも相当危険であり、綺麗になるにも長い年月がかかる。

●少女の苦悩

ある時ヒロインが一人で夜空を見るからと外へ行く。
一人外に行くヒロインに直接襲い掛かる強烈な負の言葉。衝撃をうけ、その場で苦しむヒロイン。
主人公はそれを遠くから目撃してしまう。

少女にそのことを聞くが、心配する必要はないと言われてしまう。

●日に日に体調が悪化する少女

あまり言葉を磨くこともできなくなり、動けないことが多くなってくる少女。
少年は少女を心配して近くにいるが何もできない。

しかも、少女に向かって負の言葉が少女の体に何度も突き刺さり、少女の体に吸い込まれていく。
少年は言葉を撃退しようと少女の前に立ったり、言葉で作った武器を使うが、少女に突き刺さる言葉を
撃破する事は成功しない。

●意識が戻らない少女

負の言葉を少年の前で何度も吸い込み続け、ある時ついに少女は意識不明になってしまい、寝たまま起きてこない。
少年は何とかして少女を助けたいと思い、今までのことを振り返る。
そして、最初に少年が少女に助けてもらった時の事を思い出し、また日々の言葉磨きの事を考えると、少年は少女の
体を構成する言葉を磨いたり、負の言葉を引き抜けばよいのではないかと考える。

●少女解体

そして、少年は決意し少女の体を解体して、中身を確認していく。
その中で、負の言葉は少女には張り付いていないが、少女の体の中心の「命」という言葉がどす黒くなっているのが
わかる。

少年は必死に命を磨き続けるが、汚れを何度落としても落としてもすぐに戻ってしまい綺麗にならない。
命という言葉を別の命に変えようかとも思うが、以前に少女から「命」はそれぞれの固体にひとつだけ。
一度取ったら二度と同じものは戻ってこないと話されたことを思い出し、取り外しはできない。

自分が何もできなくて悔しくて泣きたくなる少年。

命を毎日磨き続けるうちに、また少女に向かって負の言葉が突き刺さる。
正確には少女ではなく、少女の体の命の後ろに突き刺さっている事が判明。
少年は命の後ろに隠れている文字に気づく。

少女の命の後ろにあり、命に食い込むように入っていた言葉それは「死」その言葉に無数の負の言葉が張り付いており
磨いても効果が無く、取り外す事もできない。
少年はこの「死」という言葉が少女を蝕み続けているのだと気づくが、だからといって何もする事ができない。

絶望する少年。

●少女の記憶
少年は、少女を助ける方法が無いかと少女には悪いと思いながらも、少女の脳に入った「記憶」という文字
を取り出し、自らの脳に入れて、少女の記憶を見る。

<少女の記憶>
主人公は「言葉の世界」で幼少期のヒロインによって作られる。ヒロインが孤独から作った。
 そして、言葉の嵐に巻き込まれ、言葉の出口から別の世界(現代世界)へ行ってしまう。
 →主人公は記憶を失い、不明児童として施設で育つ。
  主人公が帰ってきたとき、ヒロインは主人公のことがわかるが、主人公は記憶を持っていない。
   別の世界に記憶は持っていけない。
   嵐の中で体のパーツを失う(記憶や腕とか足とか)血みどろで見つかった主人公。

  言葉自体は最初は二人は全く知らなかったが、埋もれている言葉や記憶という言葉から使い方を学んでいく。

※ヒロインがいけない理由。
綺麗なものしか出て行けないから。
汚い言葉はその場所に埋まるようになっている→浄化された後、出て行くことができる。

何日かが経過したとき、少女が再び目を覚ます。
少年は少女に話しかける。
実は前から君の事を知っていたんだというような話をされ、驚く少年。
だから、君が生きてここに戻ってきてくれただけでよかったという。君がたとえ私のことを覚えていなかったとしてもと。

●少年、記憶を探す。

少年は自分の記憶がないかと、文字をひたすら掘り返して探し続ける。
探し続けて、やっとの思いで自らの記憶という文字を探し当て、頭にくっつける。

<少年(と少女)の記憶>
・少女に作られたという事
・一緒に遊んだ過去の事。

※★この時の記憶がヒントとなって、少女を救うことに繋がると良さそう!

●少女の決断。少年の帰還。

体のことについて、少女からどうする事もできないのだと聞かされる少年。
絶望する少年に、少女は仕方が無いことだからと少年が悲しむ必要は無いという。
それよりも、少女はもう自分の命は長くはないし、少年は元の世界に戻って、今度こそ幸せに
暮らして欲しいという。

少年は少女から離れたくは無い、君の事が好きだからずっと一緒にいたいと言う。
しかし、少女はそれは駄目だと言い、少年を言葉で動けないようにさせ、少年の体に残った負の言葉を
全て磨き、完全に少年の体の言葉は綺麗になる。

綺麗になると、少年の体は身軽になり、どこにでもいけそうな気がしてくる。
少女は少年に別れ際にキスをすると、少年に「元の世界にもどれ」と命令をする。
少年は少女の命令に抵抗しようとするが、体がいう事を聞かず、言葉の穴に吸い込まれてしまう。

●元の世界に戻った少年。

今回は記憶を持ったまま現代世界に戻った少年。
(※二度と自らの記憶を失わないように、自らの脳に他の言葉を使って硬く結び付けておいた)

記憶がないが、なんとかして、汚い言葉まみれになり(それも短期間でのため、かなり危険なことをやり罵声を浴びる)
 元の世界に戻っても殺されるだけだからと、無理やりに戻ってきてヒロインを説得。
 そのときには既にヒロインは死ぬ直前。

 それでも、主人公はヒロインが好きだから戻ってきたのだという。
少女は固い意志で戻ってきた少年を再び戻すことができない(どちらにしても、その体力はもう少女には残ってはいない)

●エンディング
少女は消滅し、少女の力はお手伝い言葉である少年に受け継がれる。
少年は少女の代わりに一人で言葉を磨き続ける日々を長年続ける。

ある時、新たな「命」という言葉を見つけて、少年(既におじいちゃん)
は命に過去のヒロインの構成文字をつけて、ヒロインを新たに作り出し、お手伝い言葉にする。

そうして、新たなヒロインが誕生し、少年は死んでいく。
また、そのヒロインも次の少年を産み、少年は少女を生む。
これが二人の間で繰り返し行われていた。

二人の愛の物語。


というのが私の作ったプロットです。
少年と少女が言葉の世界で永遠に繰り返し愛し続ける。
という事を最終的には描ければ面白そう。とは思ったのですが、実際にはなかなかうまくいきませんでした。

もしかするとノベルゲームというよりは映像作品向け?
の内容なのかもしれません。
私個人としてはここでプロットまで公開したので気分としてはスッキリしました。

このように、一つの作品は複数のボツ作の上に成り立っている。
その後に完成しているのです。
ボツになっても、結局考えることは好きですので、色々な世界を考えてしまいます。

ただし、今回に関しては「世界観」が先行しすぎてしまい、キャラクターが上手く世界ののらなかった。
これがボツになり、途中でやめてしまった一番の理由です。

キャラクターが一番大切という事ですね。
世界観<キャラクターなのです。

 

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