【ウォーターフェニックス作品キャラクター対談 第12回】『結婚主義国家』【直樹】

本連載について
今までのウォーターフェニックスの作品のキャラクターにスポットをあてて
企画担当のケイ茶とシナリオ・イラスト担当のRの対談を文字にしたものです。

不定期連載で日曜日に掲載していきます。

★注意
・「結婚主義国家」本編についての重大なネタバレあり
・他のウォーターフェニックス作品のキャラについても、大きなネタバレではないものの(それぞれの作品の序盤でわかる程度の情報に)触れている部分があります

【ウォーターフェニックス作品キャラクター対談 第12回】
『結婚主義国家』【直樹】

◆直樹の性格のここが好き


【R】これは、少し難しい。
本編(儀式失敗)の話だけでは好きと言い切れないところがある。
【ケイ茶】というと?
【R】率直に言ってしまうと、直樹はダメなキャラだと思う。
なんというか、素直に好きと言いにくいというか。
見ていてストレスがたまりやすいキャラだな、と。
【ケイ茶】それはわかる。
【R】ただ、かといって嫌いなわけじゃない。必要な存在だと思う。
【ケイ茶】必要?
【R】物語の中に、ダメな人間がいてほしい気持ちがあって。
あきらかな悪役とか、どこかカリスマ性を感じさせるダメとかではなくて、普通にそこらへんにいそうで、でもダメだよね。みたいな温度感というか。
【ケイ茶】まぁ、わかる気はする。それが直樹だ、と。
【R】そう。ダメなところが好き……と言っていいのかはわからないけど。
でも、個人的な趣味としてこういうキャラクターは描きたい。
【ケイ茶】描きたいんだ(笑)
【R】葛藤したり苦悩する様子を描くのと、そこからの成長の様子が好きだからね。
「こういう人いるよね」という存在なんだけど、だからこそ、そういうキャラに最後は頑張ってほしいというか。
直樹に関して言えば、色々なところで間違えたけど最後だけはギリギリ紙一重で間違えなかった、というところが好きかな。
【ケイ茶】悩みはするけれど、最後は良い方向に行ったわけだしね。
【R】ただ、そこまでの部分だと、どうしても悪いところばかり目立ってしまうキャラではあるね。
優柔不断なところとか。臆病なところとか。悪いところは凄くある。
【ケイ茶】たしかに色々思い浮かぶ。
直樹は色々と迷惑は掛けるんだけど、本人としては素直に行動しての結果なんだよね……。
だから性根から悪いわけでもないし、その点では安心・信用できるかな?
【R】悪意はないからね。
悪意が無い事で逆に苛立たせる場合もあるけど……。
【ケイ茶】うーん。難しい。やっぱり欠点が多く見えがちだね。
【R】そう。欠点は多い。
でも、だからこそ自分の悪いところを理解して、反省していけるのは良いところだと思う。
【ケイ茶】たしかに。変にひねくれてはいない気がする。
そこがあるから、すみれも見捨てなかったんだろうな、と思うね。
【R】そうだね。
どうしようもない人だったら捨てられているだろうからね。
物語上はどうしても非日常というか、事件が起こって話が始まるから悪いところが目立ってしまうんだけど。
日常ではもっと、すみれだけが知っている良いところがあるんだろうな。とは思うよ。
たとえば、小銭を落とした人がいたらすぐに拾って渡すとか。
たとえば、風で自転車が倒れていたら起こそうとするとか。
もっと細かいところで言えば、すみれがちょっと転びそうになったら支えてくれるとか。
そういう、日常の些細な事で発揮される良さはあると思う。
【ケイ茶】なるほど。そういう細かい部分の積み重ねはあるかもしれないね。
【R】とにかく問題はあるんだけど、人として完全に終わっている、という程ではない。
だから上手く成長してほしい、と願うキャラかな。
【ケイ茶】やっぱり成長かー。
【R】直樹に関しては、この『儀式失敗』の本編で評価するというよりは、ここから始まっていくという印象かな。
直樹はこれからきっともっと成長してくれる。これはその最初の一歩、というイメージ。
だから現時点で「こういうところが最高だよね!」と語るよりは、今後に想いを馳せたい存在だね。
【ケイ茶】なるほど。

◆直樹の見た目のここが好き


【ケイ茶】地味な方だよね。
【R】そうだね。男性キャラクターの中では可愛い系を目指して描いたかな。
ただ、美形というよりは無難な、モブキャラクターっぽい感じは目指したかな。
【ケイ茶】そうだね。男らしい感じではないかも。素朴な印象はある。
見た目から大人しそうなところは伝わってくる。
【R】これは他のキャラクターもそうなんだけど、すみれとの雰囲気の相性は考えて描いている。
たとえば雛菊と信治なら子供と大人に見えるように対比させたりとか。
それでいうと、直樹とすみれはお互いが馴染むように意識したかな。
【ケイ茶】同じような色合いで、どちらも大人しそうな感じという事だね。
【R】そう。表情も基本的には困り眉ばかりで、弱気な事が伝わりやすいように描いた。
やっぱり、直樹に関しては個性が強いキャラクター性よりも、等身大の人間らしさを強調したかったから。
そういう意味では、派手過ぎないところがお気に入りかな。

◆シナリオで大変だったところ、上手く描けたところ


【ケイ茶】直樹に関してもシナリオは大変だったわけだよね。
【R】そうだね。立ち位置として割を食っているというか。
まず、連作のうちのどこかで『事前に試してみても鐘が鳴らない』という話を入れたかったんだよね。
【ケイ茶】前回もそう言っていたね。
3集は、「あえてここで入れておく。必要だから」って話がメインだよね。
【R】そうだね。
1集と2集で全体についての基本的な説明が終わったから、補足としてちょっと発展させた話として書いたかな。
【ケイ茶】たしかに。3集の2つはどちらもそんな感じだね。
【R】ただ、鐘が鳴らない以上はどうしても悪い主人公になってしまうというか。
鳴らない事に慌てる時点で「どうなの?」とはなってしまう。
【ケイ茶】たしかに。愛情より命の心配をしているわけだからね。
【R】だから描きにくさはかなり感じつつも、やっぱり必要な話だった。
かなり悩んで書いた話なのはたしかだね。
【ケイ茶】最終的に、直樹シナリオで上手く描けたところはあるのかな?
【R】これは以前も言ったけど、直樹が上手く描けたというよりは、直樹があまりにもダメだから周りの人が勝手に動いてくれた。
結果なんとかなった、という印象かな。
【ケイ茶】周りが動いてくれたのが良かったね。
【R】本当に、直樹はどうしても印象が悪くなってしまう立ち位置だから、そこに関しては悩んだ。
けど、最終的には、他のキャラを際立たせる存在になってくれたのかなと思ってる。
【ケイ茶】うんうん。
【R】直樹がダメな分動いてくれるキャラもいるから。
苦労はしたけれど皆が動いてくれたシーンは気に入っているし、その後押しを受けて動ける直樹を描けて良かったかな。
【ケイ茶】最後は丸く収まったよね。
【R】こうして何度もダメ、ダメと言ってはいるんだけど、やっぱりそのダメさを描くのが好きなところもあるから満足はしているかな。
こういう直樹の事も受け入れて愛してもらえたら、シナリオライターとしては嬉しかったりする。
それが作品のテーマでもあるから。
【ケイ茶】そうだね。
【R】あと、直樹は主人公としては格好悪く見えがちなんだけど、正樹の反応自体は自然だと思っているかな。
【ケイ茶】例えばどういうところ?
【R】実際に「命と恋、どっちを取りますか?」と言われたら、恋を選べる人は少ないんじゃないかな、と。
たとえばこれに、色々ありつつも「命を失うとしても俺は偽りの恋愛なんてしない!」と言ったのが昴。
だけど、人間がみんな昴みたいになれるとは思えない。
鐘が鳴らない。結婚できないかもしれない。それでは死んでしまうかもしれない。という状況では、それを怖がるのは仕方ないと思う。
【ケイ茶】主人公として見ると、直樹は頼りがいがない。理想的な動きはしない。
でもリアル目線だと「確かにそうなるんじゃない?」と考えると、感情移入できるところも多そうな気がするね。
鳴らないから他の人と結婚しようとしているのも、理解できなくはないよね。
【R】怖いからね。仕方ないといえば仕方ないかな、と。
この話だと端々でそういった直樹の悪いところが目立っているけれど、
直樹の一番の問題は「事前に腕輪を手に入れて、鐘が鳴るか試す機会を得てしまった事」だと思う。
【ケイ茶】ああ。事の発端はそれだよね。
あの場合、鐘が鳴らなくて当然なんだけどね!(最後までシナリオを読んでいればわかる)
【R】そうそう。
事前に「不安だから」で試した結果、逆に不安を抱える事になってしまった。
それがたまたま直樹だっただけで、もし事前入手したのが他の人でも同じような事にはなっていると思う。
【ケイ茶】事前に手に入れてなかったら、ほのぼのしたまま問題なく結婚出来てハッピーエンドだったよね。
直樹とすみれの関係性なら、卒業した時に鐘は鳴るはずだから。
平和だよね。
【R】そう。わざわざ問題を引き起こしてしまった。
でも、この騒動があったからこそようやくわかった気持ちとかもあって、直樹も本当の意味ですみれの有難さを気付いたと思う。
だから苦労はしているけれど、必要な事件だったはず。

◆現実にいたとしたら?


【ケイ茶】問題がなければ普通に良い子だよね?
【R】そうだね。鐘が鳴らないとかなければ、普通にそのあたりにいる男の子だね。
今回のは命が掛かっているから、パニックになったり、弱気になっているんだけど、
命が掛かっていなければ、もう少し頑張れるはず。
例えばすみれがいじめられてしまったとか、すみれの日常的な苦しみとかに関しては、寄り添ってくれると思う。
【ケイ茶】なるほどね。
ちょっと頑張って勇気を出して!って感じだね。
【R】だから現実に普通にいる分には自然に関わっていけると思うし、「優しい人だな」って感じると思う。
【ケイ茶】そんなイメージはできるね。
【R】ただ、現実の状況だと、すみれとの関係性は変わりそうだね。
幼馴染ではあるだろうけど、婚約者にはならないだろうから。
【ケイ茶】たしかに。あれは、結婚しないと死んでしまう国だからこそだね。
【R】ただ、逆にその方がすぐにすみれの大切さに気付いて、自分から告白とかできるのかもしれない。
【ケイ茶】うんうん。綺麗な、王道青春恋愛ものになりそうだよね。
【R】初めから、婚約者という関係を決められてしまったからこそ、こじれてしまった部分はあるかな。
【ケイ茶】結婚主義国家が悪いね!
【R】そうなるね。

◆キャラのこだわり(企画やシナリオなどにおいて)


【ケイ茶】最終的には嫌われないというか、成長ができる、成長が見えるって言うのがこだわりだったりする?
【R】そうだね。最終的には少しは応援できる気持ちになれるようには意識したつもり。
あとは、周りが直樹を褒めないようにすること。
【ケイ茶】褒めない?
【R】プレイヤーが「この主人公ダメだな」とか「好きになれないな」と思っている時に、周りのキャラが主人公を褒めていたら納得いかないと思う。
だから、他のキャラクターが直樹の悪いところを指摘する流れにした。
すみれだけは肯定してくれるけど。
【ケイ茶】聖也とかも、完全に嫌われないようにシナリオを気を付けているって言っていたよね?
【R】ある程度はそう。ただ、どうしても好き嫌いはあるから完全には無理だと思って諦める部分はある。
プレイヤーに好かれる事ばかり意識して、キャラクターらしさがブレてしまったら意味がないから。
【ケイ茶】たとえば、直樹らしさというところは?
【R】やっぱり弱いところかな。
直樹は余裕がないから、自分の事で精一杯になるとすみれの事まで考えられなくなってしまう。
でもそういうところを変えてしまうと話の根本がずれてしまって、直樹じゃなくなってしまう。
ここは直樹の良くないところだな。と思いながらも、あえてそのままにした。
【ケイ茶】そこは貫き通したわけだね。
【R】そのあたりのバランスは難しいところかな。
最終的には、「こんなに欠点もあるキャラだけど、それでも好きになってほしい」と祈りながら書くしかない。
特に、直樹は周りの目を気にするタイプだから、書いていてもそれに引きずられて読者の目は意識しがちだったかな。
【ケイ茶】書く時の気持ちにも影響するんだ?
【R】そう。だから、聖也とか雅文を描く方が気楽だったかな。
聖也は「ボクにダメなところなんてあるのかい? そんな事を言う世界の方がおかしいよ!」って精神だから、「たしかに」と思いつつ気楽に書ける。
雅文は「周りには1人の時間を邪魔されなければいい。最終的に美談に持っていけば、多少の悪評はなんとかなる」という精神だから、「気にしなくていいか」という気持ちで突き進んで書ける。
【ケイ茶】なるほど。
【R】かなり悩みながらも、「直樹はこういう人」というのを隠さず描く事にしたところがこだわりかな。

◆他のキャラともっと絡ませてみたかった・他作品のキャラと会ったとしたら?


【ケイ茶】直樹はどうなんだろうね?
【R】あんまりコミュニケーションは得意じゃないと思うけど……。
コロネ(アーキタイプアーカディア)とは相性がいいかもしれない。
【ケイ茶】あー。
【R】同族嫌悪をしてしまう可能性もあるけど。基本的には、よく似ている二人だと思うよ。
【ケイ茶】確かに、発散の方向は違うけど性格的には似ているね。
まあ、仲良くなれるかは怪しそうだけど。
【R】出会い方によるだろうね。
お互いに何かに怯えていて、「あれ怖いよね」って言い合える状況だと共感して仲間意識が芽生えると思う。
【ケイ茶】他に仲良くなれそうな組み合わせはある?
【R】仲良く、ではないかもしれないけど、受け入れてくれると思うのは氷河(ハッピールートを終わらせて)かな。
【ケイ茶】なるほど!
【R】氷河は弱い人にやさしいというか、弱い人の気持ちがわかるから。
ちょっと痛い事は言うだろうけど、本質的には否定しないはず。
【ケイ茶】そういうところはあるね。
ただ、直樹は怖くて逃げそうだね。
【R】それはある。
【ケイ茶】一方的に(氷河が)気持ちをわかってくれても、実際に話したら直樹から逃げてしまいそう。
【R】すみれがいてくれたら、上手く緩和してくれるかな。
【ケイ茶】あの人本当は怖くないよ、とは言ってくれそうだね。
【R】あと、結婚主義国家ショートストーリー後の直樹だったらそこも頑張ってくれると思う。
たとえばすみれと一緒にいる中で氷河と会ったら、「怖そうな人がいるから、僕が先に見てくるよ!」くらいはできるようになっているはず。
【ケイ茶】成長の成果だね。
やっぱり、誰と関わるにも成長してからの方が良さそうだね。
【R】そうだね。色んな人と関われるのは、(本編より)もっと先だと思う。
何度も言うけど、直樹は少しずつ変わっていけると思う。
成長できる人だろうな、というのは、すみれも感じ取ってはいるだろうし。
(直樹としても)恩も色々感じているから、反省して前に進めていくとは思う。
【ケイ茶】成長して色々な問題を乗り越えて大人になった時、本当に夫婦として上手くいっていそうだよね。
【R】末永く、幸せに暮らしてほしいね。

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